第 4 章 ― 意識を、使う
4-1
意識の使い方で、人生は大きく変わる
第3章まで、意識の構造を見てきた。
入力・処理・出力という土台(3-2)。
予測する脳(3-3)。
成長とは何か(3-4)。
注意のスポットライト(3-5)。
ことばと概念(3-6)。
記憶というシミュレーター(3-7)。
価値基準(3-8)。
潜在意識(3-9)。
そして、引き寄せの法則を構造で説明する(3-10)。
これらはすべて、意識という現象の、構造を解きほぐした話だった。
ここから、第4章では、その意識を、いよいよ「使う」話に入っていく。
理論から実践へ。構造の理解から、毎日の技術へ。
読者ひとりひとりが、自分の意識を、自分の手で動かせるようになるための、具体的な技術を見ていきたい。
その入口として、まず、ひとつの大事な事実を共有したい。
同じ環境でも、人生の質はまったく違う
世の中をよく観察してみると、ひとつの不思議な事実に気づく。
似たような環境で生きている人たちが、まったく違う人生を歩んでいる。
同じ職場で働いている人が、ある人は活き活きと充実した毎日を過ごし、ある人は消耗しきった顔をしている。
同じ家庭環境で育った兄弟が、ひとりは前向きに人生を切り開き、もうひとりは閉じこもったまま苦しんでいる。
同じ年齢、同じ学歴、同じ収入の人たちが、人生の質においては、まったく違うところに立っている。
この違いは、どこから来るのか。
能力や運も、影響している
まず、最初に、誠実に書いておきたい。
人生の差を生む要因は、ひとつではない。
能力の差、生まれ持った才能、巡り合わせの運。
これらが、人生に影響を与えていることは、間違いない。
「すべては意識の問題だ」と言うのは、誠実ではない。
社会の構造、経済の状況、家庭環境、健康状態 ― これらが人生に大きな影響を与えていることは、率直に認めなければならない。
それは、前提として置いておきたい。
ただ、それらだけでは、説明できない違いがある。
似た能力、似た環境、似た条件の人たちのあいだに、それでもなお生まれてくる、人生の質の違い。
ここに、もうひとつの要因が働いている。
その違いを生んでいるのが、意識の使い方
何に意識を向けるか。
どんなことばで自分と対話するか。
どんな未来を頭に描くか。
これらの違いが、同じ環境にいる人たちのあいだに、人生の質の差を作っていく。
これは、根性論ではない。
第3章で見てきた、意識の構造から、論理的に導かれる帰結である。
意識のスポットライトが向く先に、認知が集まる。
認知が集まったところに、感情が立ち上がり、行動が選ばれる。
行動の積み重ねが、人生になる。
だから、意識をどう使うかが、人生の質に直接効いてくる。
これは、構造的な事実である。
意識をどう使うかは、毎日、無数の場面で問われている
意識の使い方と言うと、何か特別な技術のように聞こえるかもしれない。
だが、実際には、もっと日常的なものである。
意識をどう使うかは、毎日、無数の場面で問われている。
1つめは、どんなことばで自分と対話しているか、ということ。
自己対話の質(3-1)が、思考と感情の質を決めている。
「自分はダメだ」と毎日つぶやくか、「ここから何ができるか」と毎日問うか。
「どうせ無理だ」と決めつけるか、「やってみよう」と動き始めるか。
これは、絶えず、選ばれている。
そして、選んだことばが、自分自身を形作っていく。
2つめは、どんな前提で、世界を見ているか、ということ。
私たちは、無意識のうちに「世界はこういうものだ」「人はこう動く」「自分はこういう人間だ」という前提を持っている。
この前提が、目の前の出来事をどう受け取るかを、決めている。
「人は信用できない」という前提を持っていれば、世界は警戒の対象に見える。
「世界は基本的に味方だ」という前提を持っていれば、同じ世界が、開かれた場所に見える。
この前提に、自分はほとんど気づいていない。
だから、「これが現実だ」と思い込んでしまう。
3つめは、感情を、どう扱っているか、ということ。
毎日、無数の感情が、自分の中に立ち上がっている。
その感情に飲み込まれて、振り回されているのか。
押し殺して、なかったことにしているのか。
観察して、自分を知るための手がかりにしているのか。
感情との付き合い方が、自分の人生の質に、深く効いてくる。
これらすべてが、意識の使い方である。
そして、これらのひとつひとつを変えていけば、人生は確実に変わっていく。
意識の使い方は、生まれつきではない ― 設計できる
ここで、もっとも大事なメッセージを書いておきたい。
意識の使い方は、生まれつきの才能ではない。
意識の使い方は、設計できる。
これは、人生にとって、極めて大きな希望である。
性格や才能は、簡単には変えられない。
だが、意識の使い方なら、変えられる。
何に意識を向けるか、どんなことばで自分と対話するか、どんな未来を描くか ― これらは、すべて、自分で選び直すことができる。
選び直す技術を身につければ、性格を変えずとも、人生の質は、根本から変わっていく。
これは、誰にでも開かれている道である。
特別な才能も、特別な環境も、特別な学歴も、必要としない。
ただ、意識の使い方を、自分で設計していく練習をすればいい。
そして、その練習を、毎日少しずつ重ねていく場として、WellGrowは設計されている。
この章で見ていくこと
第4章では、この「意識の使い方」を、3つの大きな技術として見ていきたい。
第1部 ― ことばで、意識をコントロールする。
ことばを、自分への入力として意識的に使うことで、意識のスポットライトを動かしていく技術。
第2部 ― メンタルモデルに気づき、書き換える。
自分が無意識に持っている世界の前提に気づき、必要なら書き換えていく技術。
第3部 ― 感情を、味方にする。
感情を否定したり抑え込んだりするのではなく、自分を知るための情報として活用していく技術。
これら3つは、それぞれ独立した技術でありながら、深いところで繋がっている。
ことばを変えれば、メンタルモデルが少しずつ変わる。
メンタルモデルが変われば、感情の立ち上がり方も変わる。
感情を観察できれば、自分が使うことばに、もっと気づけるようになる。
それぞれを、ひとつずつ見ていきたい。
だが、その前に、次の節で、もうひとつだけ、しておきたいことがある。
それは、「意識を使う」とは、いったい何をすることなのか ― これを、頭で理解する前に、体で実感してもらいたい。
そのための、ちょっとした体験から、次は始めたい。